篠山能楽資料館は、いにしえの丹波猿楽や近世の城下町がはぐくんだ風土のなかで、面、装束、楽器などの能に関する資料の蒐集と、研究活動をすすめています。伝統芸能の一拠点として日本文化の高揚に寄与することを念願し、運営しています。
沿革
1960(昭和30)年 | 中西通(丹波古陶館二代目館長)が能楽美術の蒐集をはじめる |
1973(昭和48)年 | 篠山能実行委員会を設立、中西通が発起人の一人となる 国重要文化財の春日神社能舞台にて篠山春日能を開催 (以降毎年開催、令和3年で第47回を迎える) |
1976(昭和51)年 | 中西通が篠山能楽資料館を設立 |
1997(平成9)年 | 美術館友の会「紫明の会」創立 藝術文化雜誌「紫明」創刊 |
2003(平成15)年 | 中西通逝去にともない中西薫が篠山能楽資料館・丹波古陶館館長に就任 (現在に至る) |
2004(平成16年) | 篠山能楽資料館のある河原町通りが国重要伝統的建造物群保存地区に選定される |
能楽について
能楽は日本の伝統ある舞台芸術ですが、私たちがいま一般的に演劇と呼ぶものの概念をかなり超えた姿を示し、文学や歴史・宗教、また音楽、美術工芸などさまざまな内容を包括した総合構成のかたちで舞台上に表現されます。その格調高い芸術性は殊にすぐれ、現存する古典芸能では最も古い伝承として受継がれてきました。
過去六百年にわたる幾世代の洗練を積み重ねるうちに、原初の信仰心が持つ意味や、あるいは写実色の濃い演劇的な要素に比べて、優雅な美しさや内面への追求が高まり、やがて様式化の進んだ型(かた)であらわす象徴表現が濃くなり、しだいに詩的感覚から創造される幽玄の世界を醸し出すようになったのです。
現在みられる能の演出は、徳川幕府のもとで武家の式楽となり、世襲制度を迎えてからほぼ江戸中期以降の形態が定着したもので、面・装束および道具類にも創作期からの変遷のあとがうかがえます。これらの意匠は桃山風の豪華絢爛な好みが反映し、我が国の工芸美術の中に独特の位置づけをもっています。